電子署名

当事者電子署名型サービス(当事者電子署名方式)

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当事者電子署名型サービス(当事者電子署名方式)

電子契約サービスには大きく分けて、①当事者電子署名型サービス(当事者電子署名方式)、②立会人電子署名型サービス(立会人電子署名方式)、①②以外の電子認証サービスがあります。①の当事者電子署名型サービスとは、電子署名法が従来から想定してきた、当事者双方が電子署名をするサービスのことです。法律に明確に準拠するメリットがある反面、時間と手間と費用がかかる、というデメリットがあるので広く普及してきませんでした。

20年の伝統を持つ当事者電子署名型サービス

2001年に施工された電子署名法において中心的なサービス形態として想定されていたのが、当事者電子署名型サービス(当事者型電子契約/当事者署名型電子契約/当事者型電子契約サービス)です。契約当事者のそれぞれが各々の電子証明書と秘密鍵を用いて電子署名するサービスです。かんたんにいえば、電子ファイルに「これは私がつくったものです(「だれが」「何を」を担保する)」とサインをするようなものです。

電子署名の定義とは

まず、電子署名法第2条には以下のように電子署名が定義されています。

この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することが出来ない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ)に記録することが出来る情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

電子的記録というのはコンピューターで処理する情報ということです。コンピューターで記録することができる情報について行われる措置のうち、

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること = 本人性
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること = 非改変性

といった本人性と非改変性の両方が満たされて初めて「電子署名」といえる、というのが電子署名法第2条の定義です。つまり、「だれが」「どのような」内容について行ったのかを電磁的記録に記録する、ということが必要になります。この条件を満たすような電子署名がされていればOKというです。

また、電子署名法は第3条において、

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る)が行われているときは、真正に成立したものを推定する。

としています。シンプルにいうと、

①電磁的記録のうち情報を表すために作成されたものであること
②上記に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号および物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限定)が行われている事。

の2つの条件が整ったときに、真正に成立したものと推定する、となっています。このうち①の要件についてはインターネット上で作成されたものであれば当然に当てはまるので問題はありません。②については、2条の電子署名の中でも、本人の電子署名であって、これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるもの限定で、3条の効力、つまり成立の真正の推定という効力が与えられる、という事になっています。

当事者電子署名型サービスでは、通常、十分な強度の暗号化技術を用いて本人の電子証明書と秘密鍵を発行して本人の電子署名がなされるので、この②の要件も問題なく満たすことになります。

当事者電子署名型サービスは電子署名法に沿ったサービス

現在リリースされている当事者電子署名型サービスは、ほとんどがこの3条の①と②の要件を満たすと考えられるので、そうしたサービスで締結した電子契約は成立の真正が推定される、という効力を持つことになります。当事者電子署名型サービスは、電子署名法がもともと想定しているタイプの電子契約であり、電子署名法2条、3条がストレートに想定しているサービスです。

当事者電子署名型サービスのデメリット

当事者電子署名型サービスのデメリット

メリットが多いように思いますが、デメリットもあります。当事者双方が電子署名を行うということで、時間と手間と費用のハードルが高いのです。具体的には、まず双方が電子証明書を取得する必要があるという点です。電子証明書の発行は印鑑登録をするときのように、本人確認資料を提出する必要があります。これは、相手に同じことを強いることになり、「電子契約のために新しく印鑑登録をオンラインで行ってね」と要求することになります。

電子証明書は数年程度しか有効期間がない上に、発行には費用が発生します。手続きが面倒なうえに費用も定期的に発生する、となると一度作ってしまえばずっと使用できる印鑑より人気が出るはずがありません。この手間、有効期間、費用というデメリットがあるために、電子署名法施工から20年経っても当事者電子署名型サービスは一般に普及していません。

参考文献:ゼロからわかる電子契約の実務

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