サイン(署名)の使い分け方について、解説をしています。様々な場面でサイン(署名)を求められることがありますが、公式な契約書に使用するサインと、郵便物受け取りの際などに使用するサインでは異なるサインをした方が良いのか?セキュリティ面でも知っておきたい、サイン(署名)の使い分けについて調査してみました。
契約書(申請書)への署名(サイン)
法律に関係する事柄や役所の窓口で取り扱う重要な手続きは、本人の意思に基づくものであることが必要です。押印と署名が必要な手続きはまだ多くありますが(住民異動届や委任状など)、申請書などへの押印・署名は2020年以降に随分見直され、記名のみで済むものが増えてきました。
しかし、署名は押印(+印鑑証明書)とセットで求められる場合が多く、署名の本人性・非改ざん性を問われるシーンは多くないのが現状です。
押印と署名が必要な手続きとして、身近な例として出生届や親権届、死亡届、特別養子縁組届、養子縁組届、婚姻届、離婚届、入籍届、転籍届などが挙げられます。
保険証への署名(サイン)
国民健康保険被保険者証の裏面には、臓器提供意思表示欄があります。この欄は、臓器提供の意思表示の方法・機会の拡大を図ることを目的としています。
意思表示の記入は任意で、記入の有無により受けられる医療の内容に違いが生じることはありません。臓器提供の意思表示の内容に〇を付けて、署名年月日と本人署名(自著)、家族署名(自著)に署名をします(*自著と書いてある欄については、楷書体で丁寧に書くのが通例となっています)。
しかし、本人の意思が不明な場合は家族の承諾で臓器提供が可能です。自分の臓器提供についての意思を家族に伝えることを目的とした署名なので、サインの本人確認が厳格に行われる状況は多くはないと思われます。
クレジットカードへの署名(サイン)
原則としてクレジットカードの利用者には本人であることを証明する義務があり、お店側はそれを確認する義務があります。そのため、カードに署名がない場合はお店側に利用を断られてしまう場合があります。暗証番号とサインどちらかを選択できる場合がほとんどですが、お店によってはサインのみという場合があります。
クレジットカードへの署名には書体の決まりはありません。日本語でなくても、ローマ字でもひらがなでも大丈夫です。国に合わせた言語で署名をする必要はありません。支払時のサインとクレジットカード裏面のサインが一致すればよいので、ニックネームやイニシャルでも大丈夫だったりします。
セキュリティの観点からは、偽造がされにくい漢字がオススメです。意図的に分かりにくくする必要はなく、書きやすい使い慣れたサインにしましょう。
クレジットカード支払い時の署名(サイン)
カード決済を利用するためには、クレジットカード裏面の署名欄にサインを記入しておき、かつ決済時の売上伝票にサインを記入する必要があります(暗証番号でもOKの場合がありますが、サインのみの場合もあります)。
これらのサインは本人確認に重要な役割があるため、カード裏面には油性ペンなどで署名し、レシートや伝票にはカード裏面と同じ書き方や書体でサインをします。
最近ではサインレス決済(自署なし決済)というシステムが採用されている事があります。購入者がサインや暗証番号の入力なしにクレジットカードを使って買い物が出来るシステムです。手続きを簡素化して、決済時に購入者を待たせないという事を目的に導入されました。
サインレス決済の契約を結び、かつ少額決済のみという制約付きですが、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストア、飲食店などで採用されています。
パスポートへの署名(サイン)
海外旅行でクレジットカードを使うときは、パスポートなどの身分証の提示が必要です。その際、クレジットカードの署名とパスポートの署名が異なると使用を拒否されることがあるので、同じ署名にしておくとスムーズに買い物ができます。
アルファベット、ローマ字でサインをする習慣がない場合は、旅行をする国に関係なく、いつも同じ署名ができる言語でサインをするよう心がけましょう。署名とは、筆跡をみて本人であることを確認するためのもので、署名を求められたときは同じように書けることが大切です。
漢字で署名を書いておくと、中国で有効です。外国人が中国のホテルに宿泊する際、ホテルは公安に対して外国人宿泊者の名前などを記載した書類を提出する義務があるため、パスポートなどの身分証を一時的にホテルに預ける必要があります。パスポートのサインが漢字だとスタッフが書類に記入しやすくスムーズです。
飛行機に搭乗する際に、航空券に名前が漢字で記載されている場合、パスポートの署名欄を確認されますが、ローマ字で署名してあると名前が一致していないとみなされて登場できない可能性があります。
ローマ字は署名欄とは別の部分に記載がありますが、漢字を確認したい場合は署名欄をチェックするしかありません。署名欄を漢字にしておくことで本人であることが確認できます。
自分で名前を書けない子ども、赤ちゃんの場合は親権者が代理署名をします。そしてパスポートの法定代理人署名欄に、親権者であることを証明するための署名をします。
宅配物や郵便物への署名(サイン)
最近、オンラインショッピングをした際にサインレス宅配に遭遇することがあります。サインレス宅配とは、受け取り時にサインや受領印が必要ない配送のことです。
宅配便で受け取り伝票にサインや受領印を求めるのは、荷物を預かる立場である運送会社が託されたものを引き渡したと、荷主に示すことができる証拠として利用するためです。
荷主から委託した荷物が配達されていない、受け取り主から注文した荷物を受け取っていない、というクレームが来た際にトラブルになるのを避けるためでもあります。
しかし、実は受け取りにサインや受領印が必要であるという法的根拠はありません。国土交通省は貨物なら標準貨物自動車運送約款、宅配便については標準宅配便運送約款という取引条項を定めて告示しています。ここには荷物の引き渡しについて、署名や押印が必要であるとの記述はありません。
一方、配達物が信書(書状・請求書・許可書・証明書・ダイレクトメールなど)である場合は署名や受領印が必要であることが明記されています。つまり、信書を除けば署名や受領印が必要であるとの法的根拠はなく、サインや押印を求めるのは宅配業者が配達済の証拠を確保するために独自に行っているにすぎないのです。サインレス宅配はこれを省略しようという動きです。
EC市場拡大の流れから、置き配と呼ばれる宅配ボックスへの配達が増えましたが、これも約款にサイン・押印が必要と明記されていないからこそできる宅配の形態です。